卒業研究
卒業研究は大学院の研究とは異なり、 必ずしも新しい研究成果を求められるわけではないので、 興味のあることに自由に取り組むことができる貴重な機会です。 当研究室の卒業研究では、専門分野にこだわらず、 量子力学や相対性理論を軸とした幅広い理論物理の分野について、 学生の希望に沿ったテーマについて取り組めるようにしています。 具体的には、素粒子論、宇宙論、量子情報理論、 物性理論などから好きなテーマを選択でき、 それらに関して効率的に勉強できる環境を提供します。 以下に卒業研究の方針を説明しますが、 志望を考えている学生は当研究室を訪問し、 直接話を聞くことをおすすめします。- 基本ゼミ まず前期は場の量子論のゼミを週1回やります。 場の量子論とは量子力学を発展させて、多体問題に拡張した体系のことです。 A4で100ページ程にまとめた当研究室オリジナルの講義ノート「多体系の量子力学」を読んでいきます。 これは有名なFetter-Waleckaのテキスト("Quantum Theory of Many-Particle Systems")の必要最低限な部分をまとめ、 式変形の詳細を加えて読みやすくし、さらに、 原著にはないが必要と考えられる内容を補足したものです。 このテキストは、大学3年レベルの量子力学の知識があれば読むことができ、 また、学外の評判も良くて、他大学の集中講義でも使用しています。 このゼミを通じて、理論物理の基礎を学ぶとともに、 数式の導出を追って内容を理解すること、 またそれらを人前で説明する能力を身につけます。 なお、学生の就職活動や教育実習に配慮して、 ゼミの時間は柔軟に変更できるようにします。
- テーマ別研究 後期は卒研生の適正に合わせて研究テーマを設定します。 いろいろなレベルの学生がいますので、 あまり余裕がない学生は上記の基本ゼミだけで卒研としても構いません。 意欲のある人は基本ゼミ以外に自身の興味のあることを勉強したり、 新しい研究ができるように指導します。 その場合は、勉強したことをまとめてレビューを作るか、 学会発表や投稿論文にできるレベルの新しい研究をすることを目指します。 たとえレビューであっても、 市販の本には書いてないような分かりやすい説明や式の導出の詳細が 載っていたりすると、大変価値のあるものになります。 これらをまとめ直して、次の学年の基本ゼミで使用することもあります。 また、2月に行われる卒業研究発表会で、 自分のやってきたことを発表します。 プレゼンテーション能力は研究だけでなく、 社会に出てからも役立ちますから、 人前で発表ができるようになることも、 卒業研究の重要な目標の一つです。 また、内容を面白く伝えるための、 動画制作もやっています。
これ以外にも、「超伝導と超流動」(ロンドン理論やギンツブルク・ランダウ理論など)、 「ゲージ場の理論(上)」(経路積分、ファインマン則、くりこみ、量子電磁気学)、「ゲージ場の理論(下)」(量子色力学、ヒッグス機構、標準理論、大統一理論) 、「一般相対論」 (アインシュタイン方程式、宇宙論、重力波)などのオリジナルのテキストを作っています。 「多体系の量子力学」は前期で十分読み終えられるので、 後期は学生の実力と希望にあわせて、これらのゼミも適宜やっていきます。 ここに書いた以外のテキストも随時作成しています。